今回の記事では、FP3級で出題されるであろう、所得税の計算をできるようになることがゴールです。

こんな人たちに向けて記事を書いています。
給与明細や確定申告をするときなどで目にする所得税について、なぜその金額が引かれているのか、今年度はだいたいいくらくらいの所得税になるのか、というのを少しでも知れることで家計の資産形成などに役立てていきましょう。
- 所得税とはどんな税金?
- 所得の種類によって税額が変わる
- 所得税の計算手順
- FP試験の過去問で所得税の計算に慣れよう!
所得税の基礎知識

所得とは
所得とは、
❶ 個人・法人が一定期間に勤労・事業・資産などによって得た収入から、それを得るのに必要とした経費を差し引いた残りの純収入。
広辞苑より引用
❷ 自分のものとなった金銭。収入。
とあるように、
所得金額 = 総収入金額 - 必要経費
で求められます。
所得税とは
所得税は、個人が得た所得にかかる税金のことです。
所得税額 = 所得金額 ✕ 税率
で求められます。
所得税は超過累進課税制度
超過累進課税制度とは、所得金額が一定額を超えるごとに、かかる税率が上がっていく制度です。
所得税の累進税率は5%〜45%です
所得税は申告納税方式
申告納税方式とは、税金を自ら申告して納税する方式のことです。
原則、翌年の2月16日から3月15日までに確定申告をして納税します。
- 個人が得た所得に対して課税
- 所得が一定以上で税率が高くなっていく超過累進課税制度
- 確定申告をして納税する申告納税方式
所得税の納税義務者の分類
居住者と非居住者で課税対象となる所得が異なります。
居住者の定義は国内に1年以上住まいがある個人で、非居住者は居住者以外です。
居住者は更に永住者と非永住者に分けられ、非永住者の定義が、過去10年内に5年以下しか国内に住所または居住がない個人で、非永住者以外が永住者とみなされます。
居住者のうち、永住者は国内国外問わず、すべての所得に課税され、非永住者は、国内国外での所得の内、日本国内で支払われたもののみ課税対象となります。
非居住者は国内での所得のみ、課税されます。
FP試験では以下のような問題が出題されているので、覚えておきましょう!
所得税法における居住者(非永住者を除く)は、原則として、国内で生じた所得について所得税の納税義務は生じるが、国外で生じた所得について所得税の納税義務は生じない。
2019年5月試験 問16
居住者は国内外どちらで得た所得に関しても課税対象となるため、回答は✗です。
所得税が非課税となる場合
所得税が非課税となる以下のパターンを覚えておきましょう。
- 障害者や遺族が受け取る公的年金(障害年金、遺族年金)
- 雇用保険の失業等給付金、健康保険の給付金
- 被保険者や配偶者が受け取る生命保険の入院給付金や手術給付金
- 火災保険から受け取った保険金
- 出張に伴う旅費(妥当な範囲)
- 会社員の通勤手当(上限15万円)
- 宝くじの当選金額
- 慰謝料や一定の見舞金
- 相続や贈与により取得する財産(相続税や贈与税の対象)
- 衣類や家具など生活用動産の譲渡による所得
所得税が非課税となるパターンを理解しているのか問われる問題が過去に何度も出題されているので、しっかり押さえておきましょう。
所得税において、老齢基礎年金や老齢厚生年金に係る所得は、非課税所得とされる。
2019年1月試験 問16
所得税において、自己の生活の用に供する家具や衣服(骨とうや美術工芸品等には該当しない)を譲渡したことによる所得は、非課税所得とされる。
2014年9月試験 問17
所得税の課税方法

所得税には総合課税と分離課税がある
所得税は、所得を10種類に分けて、種類ごとに所得金額を算出して、合算する総合課税ですが、一部の所得に関しては、分離課税と呼ばれ、他の所得とは合算せずに別の税率を課税する仕組みになっています。
分離課税は更に、申告分離課税と源泉分離課税の2種類に分けられており、申告分離課税は、他の所得と分離して所得を計算し課税する方法のことで、源泉分離課税は所得が合った時点で、所得を支払ったところが予め税金を差し引いて支払う方法です。
総合課税の10種類の所得については以下で説明していきます。
所得10種類を覚えておこう
- 利子所得
- 配当所得
- 不動産所得
- 事業所得
- 給与所得
- 譲渡所得
- 一時所得
- 退職所得
- 山林所得
- 雑所得
利子所得
利子所得は、預貯金の利子や国債など公社債の利子、公社債投資信託の収益分配金などです。
預貯金の利子に関しては源泉分離課税の対象で、税率は20%です。(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税込で20.315%)が源泉徴収され、課税関係は終了します。
利子所得の金額は、源泉徴収(20.315%)される前の収入金額です。
利子所得 = 収入金額
配当所得
配当所得とは、法人から受け取る利益の配当のことで、株式の配当や株式投資信託、不動産投資法人の収益分配金などが対象です。
配当所得は原則、総合課税の対象ですが、上場株式の配当等については申告不要制度や申告分離課税を選択することもできる選択制です。
発行株式の3%以上を保有している大株主の配当に関しては、総合課税のみの対象となっています。
配当所得 = 収入金額 - 元本取得のための負債利子
不動産所得
不動産所得は、土地や建物、不動産上の権利、船舶・船空機の貸付による所得のことです。
事業規模で不動産貸付をしていたとしても、事業所得にはならず、不動産所得に該当するのがポイントです。
建物の貸付が事業的規模かどうかは、5棟・10室が基準となっていて、家は5棟が基準、部屋なら10室以上の貸付を行っている場合事業的規模とみなします。
事業的規模の不動産所得がある場合、青色申告特別控除(65万円の控除)などの特典を受け取ることができます。
不動産所得 = 総収入金額 - 必要経費
事業所得
事業所得は、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業など継続的に行う事業から生じた所得のことです。
事業所得は総合課税の対象となっており、所得金額の多い、少ないに関係なしに確定申告が必要です。
給与所得
給与所得は、給与、賞与、役員報酬などの所得のほか、金銭以外のもので収入を得た場合などの経済的利益も含まれます。
給与所得は総合課税の対象です。給与所得以外に所得がない場合は、源泉徴収のみで課税関係が終了するため、確定申告をする必要がありません。
給与所得が2000万円を超える場合や、給与所得と退職所得以外の所得が20万円を超える場合には、確定申告が必要となります。
給与所得 = 給与収入金額 - 給与所得控除額
譲渡所得
譲渡所得は、不動産(賃貸用の不動産も含む)や、株式、ゴルフ会員権などの資産の譲渡による所得のことです。
ただし、棚卸資産(商品や製品)を譲渡した場合は事業所得となり、山林を譲渡した場合は、山林所得に該当します。
譲渡所得は、総合課税と分離課税に分かれます。譲渡するまでの所有期間によって、短期譲渡所得と長期譲渡所得に分かれます。
土地・建物、株式以外の譲渡が申告分離課税となり、それ以外の譲渡が総合課税となります。
譲渡所得 = 総収入金額 - (取得費 + 譲渡費用) - 特別控除額(50万円)
一時所得
一時所得は、営利を目的とした継続的な行為から発生した所得以外の所得のことで、例えば、保険の満期保険金や、解約返戻金、競輪や競馬の払戻し金などのことです。
一時所得は総合課税の対象となっています。
一時所得 = 総収入金額 - 収入を得るために支出した金額 - 特別控除額(最高50万円)
退職所得
退職所得は、退職金、役員退職金、企業年金の退職一時金などを受け取った際の金額です。
退職所得は分離課税の対象となります。
退職所得 = (退職金 - 退職所得控除額) ✕ 0.5
山林所得
山林所得は、山林の伐採または譲渡による所得のことです。
山林所得は分離課税の対象となります。
山林所得 = 総収入金額 - 必要経費 - 特別控除額(最高50万円)
雑所得
雑所得とは、他のいずれの所得にも属さない所得のことです。
例えば、公的年金の老齢給付金だったり、仮想通貨の取引による所得などが対象となります。
雑所得は総合課税の対象で、雑所得が赤字の場合は他の所得との損益通算できません。
雑所得 = 公的年金等の雑所得(①) + 公的年金等以外の雑所得(②)
① ➾ 公的年金等の金額 - 公的年金控除額
② ➾ 公的年金等以外の雑所得金額 - 必要経費
所得税の計算方法

所得税の計算手順
所得税の計算は以下のような手順で行っていきます。
- 所得を10種類に分けて、種類ごとの所得金額を算出する
- 総合課税の対象となる所得などを損益通算する
- 純損失の繰越控除を行い総所得金額を算出する
- 総所得金額から所得控除を差し引き、課税所得金額を算出する
- 課税所得金額に税率を掛ける
- 税額の総額から税額控除を差し引き、申告納税額を算出する
損益通算とは
損益通算とは、複数の所得の中で、利益のある所得と損失が出ている所得が合った場合に、赤字の所得金額を黒字の所得金額から一定の順序に従って計算して算出することです。
次の4つの所得に損失が出ている場合、給与所得や一時所得などの利益から損失額を差し引いて所得とすることができます。
- 不動産所得
- 事業所得
- 山林所得
- 譲渡所得
この4つ以外の一時所得や雑所得に対して損失が合った場合には損益通算はできません。
繰越控除とは
繰越控除とは、前年などに純損失・譲渡村拾・雑損失を出していた際に、控除しきれずに残った損失を翌年以降に繰り越して控除することです。
例えば、開業した初年度の事業での売上と経費の合計が100万円の損失だった場合、2年目の収支が100円の黒字だったとしても、初年度の100万円の赤字を繰越控除することで、2年目の所得がとなって所得税がかからない仕組みとなっています。
ただし、繰越控除をするには青色申告制度を使って確定申告をしている必要があります。
FP試験の過去問にチャレンジ
課税総所得金額250万円に対する所得税額(復興特別所得税額を含まない)は、下記の<資料>を使用して算出すると、( )である。
ア. 97,500円
2020年9月試験 問46
イ. 152,500円
ウ. 250,000円

実際に過去に出題された所得税の計算問題を解いていきます。
所得金額における課税額は、今回のように問題にあるため暗記する必要はないです。
再度計算手順を確認しましょう。
- 所得を10種類に分けて、種類ごとの所得金額を算出する
- 総合課税の対象となる所得などを損益通算する
- 純損失の繰越控除を行い総所得金額を算出する
- 総所得金額から所得控除を差し引き、課税所得金額を算出する
- 課税所得金額に税率を掛ける
- 税額の総額から税額控除を差し引き、申告納税額を算出する
今回は、4番目の課税所得金額が算出されているところからなので、1〜4は無視して5番目の課税所得金額に税率を掛けるから行います。
5.課税所得金額に税率を掛ける
表を見ると、課税所得金額が250万円のときは、税率が10%・控除額が97,500円です。
250万円 ✕ 10% = 25万円
6. 税額の総額から税額控除を差し引く
25万円 - 97,500円 = 152,500円
よって答えはイとなります。
まとめ
今回は、FP試験で所得税の計算問題が出題された際に、余裕で解答で切るようになるのがGOALな記事を書いていきました。
FP3級だと、計算の手順の4番目までは省略されていることも多いので、課税所得金額がすでにわかっている事が多いです。
その他の部分は知識面を問う事が多いのでビビらずに何度もこの記事を見返していきましょう。
- 所得税は所得にかかる税金のこと
- 所得には10種類ある
- 所得によって総合課税と分類課税に分けられる
- 総合課税 ➾ 所得を合計して税率を掛ける
- 分離課税 ➾ 他の所得とは合算せずにそれぞれに税率を掛ける
- FP3級では、課税所得金額に税率を掛けて控除額を引くことで求められる計算問題が主流